column15 2023

  

 

2023.04.19

 

 

★　瞑想行について  その壱　  站桩編

 

 

 

　瞑想とは脳の休息方法の1つである。　・目的は『脳疲労を減らす』事。　・人は何かを ”考えない” ことができず『雑念』が湧いている。　・この『雑念』で脳のエネルギーが失われる。（60～80%失われる）　・雑念の正体は『今ここ以外への向かう思考』と『自動思考』　　・雑念を減らす為に今ここに集中する。あるがままを観察し五感の感覚に気づく。

 

 

▼  『観察して気づく』だけなら『雑念』が起こらない。   ▼ その ”今ここ” に集中するための方法が瞑想。  ▼ 〇〇瞑想などたくさんの方法がある。  ▼ よく見る座って行う瞑想は『静坐瞑想』という瞑想の1つの方法。   ▼ 座って行う以外にも呼吸や歩行に観察し雑念が消えれば瞑想になる。   ▼ 心が強くなる。   ▼ 脳機能の向上。   ▼ ストレスホルモンの低下。   ▼ リラックス効果。（副交感神経優位になる）   ▼ 血圧が下がる。    ▼ 感情コントロール力アップ。  ▼ ストレス耐性アップ。  ▼ 攻撃性、怒り、イライラの軽減。   ▼ 睡眠の質の向上。    ▼ 鬱、不安、依存症治療と予防。   ▼ 幸福感の強化。（セロトニン神経の活性化効果、オキシトシン分泌効果）   ▼ 記憶力、集中力、生産性の向上。   ▼ 仕事のパフォーマンス向上。   ▼ 寿命が延びる（テロメアが縮むスピードが下がる）  ▼ ダイエット効果   ▼ 免疫力アップ  　 …　etc

 

 

 

　一般的には、瞑想はかくのごとく解説されてますが、その本質は、アートマ（真我）への飽くなき修行、サーダナではないでしょうか。求道することもう幾年にもなりますが、真我探求がいかに大変か、至難の業かを実感しています。その道に達するには、不断の努力と忍耐と強靭な意志が必要です。生涯をかけて行う作業（自己との対話）になると思われます。終わりの見えない修行、道半ばでありますが、過去の記憶を紐解きながら、自分なりの瞑想への道について述壊してみようと思います

 

 

　我々は自我の働きで社会と折り合いをつけて暮らしています、自我が生み出す競争心、功名心、向上心が新たな事業や製品、商売を回しています。自我を完全になくせば果たして社会で上手く立ち回れるでしょうか、深山幽谷で霞を喰べていくわけにはまいりません。瞑想に練達すれば必ず自我が失われゆく不安が浮上します。しかし自我への執着があるかぎり、アートマへ向かうことは難しい。自我を完全に消滅させることはできなくても、湖底に沈殿する砂のように、水面まで上がってこないように制御できれば、アートマへの準備は整います。湖の底から出ている湧水から空気が時々出てきても湖の水面は変わらず静かにあるように、水面下で少しの動きがあったとしても湖の全体に吸収されるが如くに、自我を沈めておくためには、雑念妄想を自由にさせないことです。自我を取り巻いて護っているのは自動化した "想い" です、我執からの離脱は先ずこの勝手気ままに暴れまわる想念に手綱をつける、心（マインド）を制御化に置く訓練から始まります

 

 

 

「 瞑想とは一つのことについて熟考すること、一つの想念を持ち続ければ、すべての他の想念は徐々に消え去る。瞑想をやめる時が来る時、あなたは瞑想の観念が瞑想する人と瞑想の対象という二元性を含んでいることをよく理解し、瞑想をする必要がない本当の真我の見地を知覚するようになる。外部の対象に向かっていこうとする心が克服された時、次に来る障害は人が瞑想を実行する為にそこにいる、ということを忘れることです。　次の障害は、内部で動き続ける心です。もし制御することが難しければ、呼吸を用いるか、賢者との交わりをもちなさい。すべての他の想念に侵されないようにすること、外部の影響を受けたり他の事柄について考えたりすることなく、真我についての自分自身の探求に心を繋ぎ止めておくこと。

 

　真我の実現はそれ自身沈黙です。心は光としても対象物としても機能します。もし対象物が取り除かれれば、光のみが残るでしょう。我々が内部で真我に気付く時、我々はそれだけを意識するようになる。過去から続いている心の印象、傾向がある限り集中は不可能で、修練と冷静さが必要です。冷静さとは拡散された想念がないことであり、修練とは一つの想念だけに集中することです。空白を見渡している意識は真我です。死の恐れは想念が生じた後でだけやって来ます。すべての想念は非実在のもの、エゴから来ています。

 

　貴方が習慣的に熟考するようになった時、霊的至福を自然に体験できるようになる。人は絶えずサマーディの状態に入り、その真我を知り、真我を知る前に古いヴァーサナと心を完全に絶滅しなければならない。もしあなたが真我への思いを持ち続け、一心にそれに注意を向けるならば、集中において焦点として用いて来た一つの想念さえ消え失せ、あなたは、「私」、エゴを持たない本当の真我に只あるだけだろう。 」　　　～ 不滅の意識 ｜ ラマナ・マハルシとの会話より ～

 　

 

 

 

　訪日外国人が増えて観光客で溢れかえる京都も昭和真っ只中にはどこを歩いても静かで情緒ある古都の風情が楽しめた。大学の通学エリアだった伏見稲荷から三十三間堂の辺りは、低山ハイクができる稲荷山やヨーガの定例会場だった泉湧寺、美しい庭園のある東福寺とその寺域界隈がブラブラ歩きの定番コースだった

 

　ある日東福寺そばを歩いていると別院の入り口脇に暁天参禅会の看板を目にした。当時武道と禅の関わりに関心があり、早朝6-7時に禅堂が開放され誰でも入場できるという気軽さもあって、時折気まぐれながらも参禅に通うようになった、これがその後の何十年にわたる瞑想（迷走）行に埋没する最初の一歩だった。何かとやかましい今日ではありえない自由さで、参禅の意志ある者が、勝手に入って勝手に座って勝手に帰る、自らが主体となる道場だった。土日には指導僧がいるようだったが、平日には経験者のみの参加で指示されることもない、周りの人（ほぼ皆僧籍）の所作を観察して見様見真似で座ることになる。静寂沈黙の堂内、話はできないので、出口付近で帰り際の僧侶に声掛けし、基本的な礼拝、座り方、呼吸についての教えを乞うた。坐法や呼吸については既に古武術で学んでおり、目新しさはないが、それらに意識を注ぎながら3-40分近くじっと動かずに座っているのは初めのうちはけっこうな苦痛を感じた

 

　座るのは胡坐でも結跏趺坐でもよいが、座蒲を尻下半分ほど入れてしっかりと腰を入れる、臍から拳一つ下の丹田を両股の間に押し出して気息を籠める、背筋を伸ばし、顎を軽く引き、頭頂が天から吊り上げられるようにして首と頭を胴体の真上にのせる。頭のてっぺんから会陰まで真っ直ぐな棒に貫かれているかのように天地垂直にする。呼吸は基本は*丹田呼吸で、慣れれば数息に入る。静かに入息しながらお腹が凸らむ、吐息で「ひ～と～」と数え、お腹が凹み吐き切る、次の入息で「～つぅ」と数え終わる。十まで数えたらまた一つに戻る。最初のうちは五つ六つくらいでどこまで数えたか忘れてしまう・・ 雑念が邪魔するのだ。気まぐれな心はあちこちさまようが、意識に凝念し、呼吸に集中して不動心を養う

 

 

*　最初に息を吐き切る　◦ 吸息（きゅうそく）鼻から静かに息を吸い込む。横隔膜を下げて腹が凸らむ。吸い込んだ息を下腹（丹田）に押し込む。その際に肛門を軽くしめて丹田に意を込める　◦ 停息（ていそく）丹田に気を籠めたまま2-5秒息を止める　◦ 吐息（とそく）肛門を緩めて、鼻から静かに息を吐き出す。腹の力を静かに抜いて、腹を凹ませる　

 

 

 

　仏教の瞑想はこのような一意専心の禅行（サマタ瞑想）の他に観察行法のヴィパサナ瞑想というのがある。瞑想は雑念妄想からの離脱を目途とするが、サマタは意念や音声（マントラ）や集中的行為にて雑念から逃れようとする。忘我で神呪や念仏を唱えたり、文字や図形を一心不乱に書く、スポーツや仕事で高度な集中状態、ゾーンに入るというが、これも一種の瞑想態といってもよいだろう。瞑想は必ずしもスピリチュアルな経験と結びつくものではない。昔から日常的に職人や音楽家、あるいは武士などは対象への高度な集中で身心を統御できるようにしていた。対象への集中は普段の生活で行なう「仕事」の分野がやりやすい、仕事を懸命にこなしてるうちにゾーンに至って対象への一体感を得る、そうして集中が高まれば、意識がクリアになって広がり、やがて静寂平穏の境地が現れる

 

　ただ観察するという受動的なワークであるヴィパサナは、雑念妄想にどう対処するのか、サマタなら雑念を消すための別の凝念に集中する、ヴィパサナではその雑念も観察する、沸き起こる身体の感覚も心の働きも全て観察する。次々と勝手に起こる思考をただ見つめているうちに、起こる思考が段々と尽きていき、終には空の状態を観察することになる、凝念にて雑念を除き、無念無想に至ろうとするサマタと最終的には同じ境地に達することになる

 

　ヴィパッサナは思考する心（マインド）が特定の体の部位あるいは心の動きを観察することで、観察と言いつつそれを行なっているのはマインドなので、言葉は違えども実のところは集中をしている。サマタ瞑想もヴィパッサナ瞑想も言い方が違うだけで集中および観察というワークをしている、そして共に高次のサマディに至る段階においては「行為」は消える。アートマ（真我）が顕現すれば、全ての意思の働きは何の行為もない、つまりここが本当の "ヴィパッサナー" である。サーチライトをあちらこちらに照らして観察対象を探している間は、サマタの集中瞑想と変わりはないので、優劣の差異はまったくない

 

　では凝念の瞑想では、脳は休まらないかというとそうでもない。リラックス効果のある意念を用いれば、脳のざわつきばかりではなく、身体のこわばりさえも除くことができる。武術から始まり気功の重要功法で "站桩功" というのがある。日本では「立禅」と呼ばれる、不動の姿勢で意念を用いて身心を活性させる手法は、サマタ瞑想に相似しており、違うのは精神と身体を意念で結びつけることである。瞑想が精神の修養であるなら站桩は身心の修養である。ただ最終的な到達点は同じで、雑念妄想から離脱し、高度な集中から無空の境地を目指す。站桩の源流である意拳宗師王薌齋によれば、 ｢空洞忘我 天地合一｣という空性の境地に達するという

 

　站桩は確たる凝念によって、より積極的に雑念を滅ぼそうとする。一部の瞑想では、雑念は抑え込む必要はないと教えているが、それは雑念を押さえ込もうとすると余計に雑念に考えが及ぶことを戒めるためであって、雑念を放っておけばいいというわけではない。この種の、「これでいいんだ」系のスピリチュアルという落とし穴には修行者は気をつけねばならない。最終的には雑念は抑え込む必要があって、そうしないとアートマへの意識は埋没したままになる。雑念や心のざわつきの正体は、今ここ以外に向かう思考（過去と未来と空想への意識や思考）と何かをきっかけに自動的に湧き上がる思考（無意識での行動や判断・反応）である。それらを抑え込むためには、精神ばかりではなく、身体感覚とも結びついた站桩の意念力が効果を発揮する

 

 

　 静は必ず動を含み、動は必ず静を含んでいる。したがって、瞑想などの精神修養で静のみを求めても、静だけの状態からは、様々な雑念や妄想が湧いてくる。それらの雑念を意識して押さえるのではなく、別の対象を用いて、雑念や妄想を消滅させることが早道である。人の意識を静と動に分けて、静は静だけ、動は動だけとすると、心を安定させることが難しく、雑念の発生が抑えられない。心の安定には、中正を保つこと、つまり内外動静を調和させること、もちろんそれでも雑念は起こるが、思念の集中及び観察で起こる雑念よりも明らかにその総量が減っていることに気づかされるだろう

 

　規則正しく鍛錬を重ね、粘り強く訓練を積むことによって、心を一点に固定することが可能となる。その状態は一意専心（エーカーグラハー）、集中（ダーラナー）と呼ばれる。サーダナを始めたばかりの者にとっては、ダーラナーはとても難しい、ある程度進歩すると止めてしまうからだ。止めてしまって心に平安がなくなったとしても続けることができない。しかしこの集中は、神聖な歓喜、計り知れない英知、内なる目、より深い真理を捉える洞察力、より明快な理解、至高神との一体感を人に授けてくれるのである。。

 

 

弐部に続く・・ 　   

 

 　　　　

 

　◉　站桩意念活動について（身体姿勢要領は省く）

　

 

　・　放松意念活動　身体の強張りを見つけて、そこがフワフワした綿菓子のように柔らかくなる又はフワッと膨らむとイメージする。最初は、頭の後ろ、首の後ろ、肩、両腕の後ろ、両手の甲、背中、腰、臀部、股、股の後ろ、踵、足の裏、足の指を上下に反復する。その後、頭頂、瞼、顔面、口、首、肩、両腕の前、両手首、両手、胸、腹、腿の前、足の甲、足の指と反復する。慣れてくれば前後両方同時に行う。どのような姿勢であっても、先ずはリラックスすること弛めることから始める。ヨガのシャバアサナにも応用できるユーティリティーな意念である

 

 

・　抱球意念活動　大きなバルーンを抱えて、力を入れると空気が抜けるまた破れてしまう、力を抜き過ぎると手をすり抜けて飛んで行ってしまう、そのために力を入れ過ぎず抜き過ぎず程よい感触で軽くて軟らかい風船をフワッと優しく腕の中に保持する

 

 

・　水中意念活動　心地よい温度のお湯に浸かっている、お湯が四方八方から湧き出て、ゆっくりと身体に向かって流れ、その流れに任せてユラユラと自由に揺れ動いているとイメージする

 

 

・　天人合一意念活動　自分が優美で心地良い場所で、立つ、座る、横になると想像して、大海原、輝く星空、名月など風光明美な風景を静観する。心が晴れ晴れとする、次第にぼんやりしていて自分の存在を忘れ、天空自然と宇宙と溶け込む

 

 

 

 ＊  妄念への対処　　雑念が多く抑えがたい場合には、聞くに任せ、自然に従う。来るものを拒まず、去るものを留めず、自身を海のように見なし、雑念を波のように見なす。風浪が激しくても、私には害がなく、風が収まり波が静まれば、水は自然に波立たない。こうして、雑念は自然に克服される。また、自身を大きな炉のように想像し、雑念を枯れ枝や落葉のように見なして、炉に入れば自ずと灰になると考える

 

 

 "  離開己身無物可求、執着己身永無是処  "  　己の身から離れば何も求めることはできず、己の身に執着すれば永遠に正しいところはない。意領を根本としても、それに執着してもいけません。「一想即止 一止即想」の境地を味了することです

 

 

 

 

 

　◉　ヨーガスートラ 3章1~3 にダラーナ、ディアーナ、サマディについての説明が参考になります。人によって解釈訳文が違うので併記しておきます

 

 

 

☆  「凝念（ぎょうねん）とは、心を特定の場所に縛りつけておくことである。静慮（じょうりょ）とは、同一の場所を対象とする想念がひとすじに伸びていくことである。その静慮が、外見上、その思念する客体ばかりになり、自体を無くしてしまったかのようになった時が、三昧とよばれる境地である。」　

 

～ ヨーガ根本教典 （佐保田 鶴治 著）より ～　　

 

 

 

☆  「集中（ダーラナ）とは、心を１つの場所、対象、あるいは観念に縛りつけておくことである。瞑想（ディアーナ）とは、そうした対象への認識作用の絶え間ない流れである。三昧（サマーディ）とは、このディアーナそのものが形を失ったかのようになり、その対象がひとり輝くときのことである。」  　

 

～ インテグラル・ヨーガ (スワミ・サッチダーナンダ 著）より ～　

 

 

 

☆ 「ダーラナー（集中）とは、心をある特定の対象に集中することである。その対象の知識の普段の流れが、ディヤーナ（瞑想）である。それが全ての形をすてて、意味だけを映すようになったとき、それがサマーディである。」　

 

 

～  ラージャ・ヨーガ (スワーミー・ヴィヴェーカーナンダ 著）より ～　

 

 

 

☆　 「心（マインド）と物体との間の途切れない認識の流れがディヤーナ(瞑想)である。瞑想では、心（マインド）は気を散らすことなく、着実に集中の対象を掴んでいる。 他の考えは心（マインド）には入らない。主体と対象の意識が消えて意味だけが残るとき、サマーディと呼ばれる。」

 

 ～  Meditation and Mantra (Swami Vishnu-Devananda著）より ～